Bリーグへの期待


①バスケットのBリーグが開幕、Jリーグを成功させた川淵三郎エグゼクティブアドバイザーのリーダーシップの下、大胆な改革が注目される。
②日本のスポーツ界には「競技間の壁」「制度・組織の壁」「グローバルの壁」があるとされており、これは日本の産業界の問題と酷似している。
③日本企業も現状の延長線で事業を考えるのではなく、成功事例を参考に大胆な変革が必要。

国内バスケットボール男子のナショナルリーグ(NBL)とbjリーグが統合した新リーグ「Bリーグ」が9月22日に開幕。東京・国立代々木競技場で行われた開幕戦は白熱した試合となり、アルバルク東京(A東京)が琉球に80−75で競り勝ちました。私自身は、Bリーグの開幕戦が行われるということを全く意識しておらず、翌日のニュースでその様子を見たのですが、様々な画像を駆使したわかり易い内容や会場の工夫などに驚きました。

ところで、バスケットボールといえば、日本のスポーツ界におけるガバナンスの問題の代表例とも言える状況となっていました。近年、国内男子リーグの分裂状態が続いたことなどで、日本バスケットボール協会は国際連盟(FIBA)から資格停止処分を科され、日本代表は国際舞台から一時閉め出される事態に陥っていました。そのような中、サッカーのJリーグを成功させた川淵三郎エグゼクティブアドバイザーのリーダーシップの下で分裂していたNBLとbjリーグが統合し誕生したの国内プロリーグがBリーグなのです。

バスケットボールは世界ではサッカーに次ぐ競技であり、日本でも競技者登録人数は野球、サッカーに次ぐ3番目のスポーツです。ところが、日本ではマスコミに取り上げられる機会は非常に少なく、まさに日本のスポーツ界の問題の象徴でした。そのバスケットボール界で組織構造の大改革が成功すれば、他のスポーツでも参考にできる好事例となるかもしれません。

ところで、日本のスポーツ界の問題は日本の産業界で起こっている問題と酷似しています。

低迷が続く日本のスポーツ産業

日本においてスポーツは明治時代に軍事教練の一環である「体育」の延長として広まり、現在でも相変わらず行政主導で運営されています。これだけ多くの人がスポーツを楽しむ時代になっているにもかかわらず、行政に依存し管理され、民間による自律的な発展がみられません。スポーツ産業という視点で見た場合、欧州のサッカー、米国のベースボール・アメリカンフットボールをはじめ様々なスポーツが産業として成長しています。しかし、例えば日本のプロ野球は過去20年間産業として全く成長がみられず、テレビ中継なども減少するなどじり貧の状態にあります。ちなみに20年前を振り返ると米国のメジャーリーグと日本のプロ野球の市場規模はほぼ同じで1500億程度、それが日本は現在でも同規模であるのに対して、大リーグは5000億円以上の規模となっているそうです。つまりスポーツ産業の問題点は日本経済低迷の縮図と言えるのです。

日本スポーツ界の問題点

さて、野村総合研究所の石井宏司氏は日本のスポーツ界には「競技間の壁」「制度・組織の壁」「グローバルの壁」があると指摘しています。

米国では季節に応じて様々なスポーツを楽しむ文化が当たり前に存在しており、子供たちは複数のスポーツを行うのが一般的です。これに対して、日本は競技ごとにピラミッド構造が出来ており、競技に本格参加する年齢の低下と選手の囲い込みの早期化が起こっています。その結果、競技レベルの向上には一定の成果は出るものの、競技間で選手や資金、練習環境などのリソースを取り合い、スポーツ界全体の発展という観点がないため、知見・人材の流動化が起きにくくなっています。また、若年化・囲い込みは短期的な成果を求めることによるケガの増加や、補欠の存在によるモチベーションの低下によるスポーツドロップアウトを生み、スポーツ産業全体の規模を縮小させています。これが石井氏の言う「競技の壁」です。

「制度・組織の壁」も日本社会の問題点の縮図と言えます。スポーツに関して何か新しいことをやろうとすると、その管轄官庁・自治体・関連法など様々な許可を得ることが必要となり、極めて窮屈だと言われています。これは行政組織だけの問題ではなく、競技の中でも様々な組織の壁があるとようです。例えば、野球はプロ・アマだけでなく、大学・高校、硬式・軟式など様々な協会・連盟が存在し、ライセンスに関してもバラバラに発行されるなど、競技全体としてのガバナンスは効いておりません。日本において、一元的な管理によるガバナンスがそれなりに効いているメジャーなスポーツはサーカーくらいだと言われています。

最後は「グローバルの壁」です。世界では産業としてのスポーツは中間所得層の増加もあり急速に発展しています。海外では貪欲に成長を追求しており、様々な交流を通じて、お互いのノウハウを吸収するとともに、自分たちの考えを主張することが当然となっています。これに対して、日本は国際的な場面にはそもそも参加しておらず、また十分な主張が行われていません。その結果、様々なルールが海外の主張によって決まっていくわけです。よく日本選手が活躍すると不利なルール変更が行われると感じることもあると思います。しかし、これは日本が主張や根回しを行えていないことによる結果とも言えるわけです。

ここまで書くと、日本のスポーツ界における問題は産業界で起こっている問題と酷似していることが分かると思います。「競技間の壁」は産業界における終身雇用を前提とした変化対応に乏しい労働市場の問題と共通します。「制度・組織の壁」は様々な規制、産業してのガバナンスの欠如です。「グローバルの壁」は国際展開の遅れや国際標準化競争での敗退と瓜二つといえるでしょう。

ベストプラクティスを活かした改革を

さて、日本のスポーツ界の問題の象徴ともいえたバスケットボールは、サッカーでの成功体験がある川淵三郎エグゼクティブアドバイザーの知見とリーダーシップによって、改革の一歩を踏み出しました。これは、企業でいえば経営危機に際して成功体験のあるプロ経営者を連れてきたのと似ているかもしれません。また、競技間で成功へのノウハウを共有する一歩となり、日本のスポーツ産業全体の改善に結び付けばよいと思います。オリンピックを見ても飛躍がみられた競技は目標となる選手や指導者が存在し、明確な目標設定が行われています。また、トップ選手が積極的に海外に出ていくことでノウハウを吸収していることなど、成功事例には様々な共通点があると思います。この様な成功事例のノウハウは是非その他の競技でも共有されればよいと思います。

これを、産業・企業に当てはめると成功事例は、さらに多く存在しています。過去20年間日本の経済が低迷する中でも成長を続けた企業は数多く存在し、そのような企業にはやはり成長を続けることが出来た理由が存在します。日本社会はスポーツにおける競技間の壁と同様に、人材の流動化がないために企業間のノウハウの共有が進まない傾向にあり、企業内の閉じられた世界の中で意思決定が行われています。現状の閉塞感を打破するためには、現在の延長線で物事を考えるのではなく、他の成功事例を謙虚に学び、大胆に現在のビジネスモデルを変更していくことが必要なのではないでしょうか。




 

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