マテリアリティマップ


企業に求められるCSRは企業の社会的責任や規範としてのものから、環境・社会・ガバナンスなどいわゆるESGを軸とした企業の持続性を高めるための取組みというように大きく変化してきています。その時重要となるのは、多岐にわたるサステナビリティを巡る課題の中で、自社にとって重要な課題は何であるかを把握する事です。その際、有効なのがマテリアリティマップを用いた課題の優先順位付けです。

企業のサステナビリティを巡る課題認識の一般的な手順は「①課題把握・抽出→②各課題の重要性・取り組み状況の把握→③重要課題の特定」となりますが、その内②の段階でマテリアリティマップを用いると③重要課題の特定が容易となります。また、投資家から見た場合にも、この様な管理に基づく開示は納得感の高いものです。

マテリアリティマップとは横軸に経営への影響度、縦軸にステークホルダーの関心度・影響度を取り、各課題をプロットしたものです。原点に近い、つまり経営への影響度が低く、ステークホルダーの関心度・影響度も低い課題に関しては重要ではなく、原点から遠ざかるに従って重要度は高まります。その際、経営への影響度が小さくてもステークホルダーの関心が高い項目や、逆にステークホルダーの関心が低くても経営への影響度が高い項目については状況を見極めつつ対応すべき重要性の高い課題となります。往々にして軸を1つで考えていると、もう一方の軸で見た場合の重要課題を見落とす可能性がある事から、線ではなく面で理解する事が重要となるわけです。

これまで、サステナビリティを巡る課題分析は、主にCSR担当部署が取り扱ってきました。CSR担当部署がGRI4.0に準拠したCSR報告書作成のためにマテリアリティ分析を行うことも一般的に行われています。課題把握の場面ではSRIインデックスの調査機関によるアンケートやレビュー、業界他社の取組み状況などの情報収集を行うのが一般的です。次に重要性把握の場面では社員の認識や取り組み状況などの社内調査、NPO/NGOや専門家によるステークホルダーダイアログに加え、SRI調査会社や機関投資家のESGアナリストとの対話により、その関連性や重要度などを整理していくというのが一般的でしょう。しかし、今後はこれだけでは十分とは言えないと考えられます。

EurosifがSRIの定義を社会的責任投資(Socially Responsible Investment)、持続性を意識した責任投資(Sustainable and Responsible Investment)に変更した事に象徴される様に、CSRの視点は、社会的な影響から財務的なインパクトのある環境、社会、ガバナンスの把握へと軸足が大きく変化しています。「倫理は持続性のための1つのコンポ―ネントであるが、倫理的である事が必ずしも持続的な発展のゴールに至るわけでない」という意見を踏まえると経営の影響度には財務的な視点が欠かせません。

現在、上場会社のCSR部門が行っているPDCAプロセスは社会的規範を尊重した形で作られており、財務的な視点を持ったステークホルダーへの対話が不足していると言えます。今後は各課題がリスク・機会として、どのような財務的インパクトを与えるのかという視点で検証していくと、マテリアリティマップのプロットも変わってくると考えられます。そして、それこそが投資家のスチュワードシップ活動における重要なアジェンダの1つとなると考えられます。

大阪ガスのマテリアリティマップ

大阪ガスのマテリアリティマップ




 

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