港区のマンション価格は上がるか


先週のマイナス金利で不動産価格は上がるかの記事を見て、個人投資家の方から質問を受けました。その方は港区にマンションを保有されており、それの価格が今後どのように推移するのかが気になるそうです。
私は、不動産価格の専門家ではないので、港区のマンション価格について専門的な見通しを持っているわけではありません。しかし、港区は日本の中にあって非常に特色のある地域で、この地域を考えることは日本の将来を考えるうえで重要な意味があると思います。

なお、先日の「マイナス金利で不動産価格は上がるか」のエッセイは純粋に金利の影響を考えたものです。不動産価格は、不動産から得られるキャッシュフローによって決定づけられるため、キャッシュフローの動向を予想することは重要です。つまり賃料が上がるか。賃料が上昇する背景である、そこから得られる付加価値が上昇するかという事を考えることが重要となるわけです。ただ、東京都港区の不動産価格を考えた場合、この地区にはその他の地区では見られない2つの大きな特徴があるように見えます。

1つは人口動態です。2/26に総務省から2015年国勢調査結果が発表されましたが、人口増加トップの都市は東京都港区で24.3万人、年率3.5%の増加となりました。これは、国別の人口と比べると、カタールの8.28%増、オマーンの5.89%増に次いで世界第3位の人口増加率となるそうです。これは人口増のイメージが強いインドの1.58%増なども上回っています。また、日本国内の人口増加(人数)上位の市区町村は9位まで東京都区部が占めています。
2015年の日本の人口は1億2,711万人と5年前と比較して94.7万人の減少となっていますが、地域間格差は持続しており、北海道は12.2万人減となっています。また今回の特徴は前回調査では増加していた大阪府が今回は減少(2.6万人減)に転じ、東京都は35.4万人の増加となっているものの第2位の神奈川県は7.8万人増と前回25.6万人増を大きく下回っています。この結果を見ると、人口減少が始まる中で、単なる都市化ではなく東京一極集中の傾向がますます強まってきたといえるでしょう。

なぜ、日本では東京への一極人口集中がさらに進んでいるのでしょうか。インターネットの普及や交通機関の高度化で人々はそれぞれが住みやすい地域に分散して暮らすことが可能になると考えられた時期もありました。しかし、実際にはITベンチャーのシリコンバレー、バイオのボストン、映画のハリウッドというように産業の地理的な集積はグローバルでもますます進んでいるように見えます。日本でも同様の理由で東京23区、とくに港区への人口集中が進展しているのではないでしょうか。ただ、港区の場合、シリコンバレーやハリウッドと比べると明確な産業集積は見えにくくなっています。

港区の動きは人口減少と高齢化の結果かもしれません。つまり、人口が減少し、高齢化が進展すると利便性の低い地方の利便性はますます低下し、都市の利便性の高さから都市部の人口が増加します。また、高齢化の進展によって製造業中心の経済からサービス業を中心とした経済構造への変化を生んでいる可能性もあります。利便性の高い都市部に人が集まり、都市部においてIT(情報技術)を用いた生活関連サービス需要が創造され、産業がサービス化していく動きが都市部への人口集中という形で示現してきているわけです。

日本の都市部への人口集中度を振り返ってみると、1960〜1970年代には工業都市化による人口集中が起きましたが、現在は商業・サービス都市化です。生産年齢人口が減少している日本が成長するためには、人口集中を伴う商業・サービスを中心とした生産性向上が必要です。それが示現しはじめているのが東京23区、とくに港区といえるでしょう。日本は人口減を補う生産性向上を経済集中化で示現し始めているように見えます。

付加価値生産額からみた、日本の産業構造における非製造業化の牽引役は情報通信業です。すでに情報通信の付加価値生産額は自動車・同部品を抜き、電機の過去ピークの水準も抜いています。海外の事例でも明らかなように、情報通信産業が発展する局面では一か所に産業が集積します。東京港区周辺は都市の利便性だけでなく、日本における情報産業の集積地と位置付けられているのではないでしょうか。したがって、この流れは今後も継続する可能性が高く、その結果として人口増加と関連産業の集積はますます進むと考えられます。シリコンバレーやサンフランシスコの不動産価格を見ていると港区周辺の不動産は今後も他の地域に対する優位性が継続する可能性は高いのではないでしょうか。不動産価格だけを見ると、このような高価格のエリアに産業が集積するのは非効率と考えられるかもしれませんが、海外ではより狭い地域に産業の集積が進む傾向にあり、これは日本においても同様と考えられます。2015年国勢調査にも見られる日本の人口集中はそれが表れてきたものと言えるのではないでしょうか。




 

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