「少数株主」としての機関投資家の思考


コーポレートガバナンスの議論を行う際に「少数株主の権利」という視点は欠かせません。トヨタAA株式などでの少数株主の権利が議論されたのは記憶に新しいと思います。ところが、ある方から「機関投資家は大株主なのにどうして少数株主の権利を問題にされるのですか」という質問を受けました。これまで、あたりまえの様に少数株主という言葉を使って来ましたが、たしかに誤解を招きやすい言葉だと思いましたので、改めて解説させていただきます。

少数株主というと、文字通り少数の株式を保有している株主というイメージで捉えられている方も多いと思います。しかし少数株主とは、企業の連結決算において、ある子会社の自己資本の中で、親会社の持ち分以外の部分を所有している株主のことをいい、企業の議決権の一定割合または一定数を有する株主のことを示します。会社法においても少数株主(議決権の一定割合や一定数をもつ株主)に対しては、株主総会招集請求権や株主総会招集権、株主提案権、会計帳簿閲覧権、取締役等の解任請求権などが認められています。一方、単元株を有する株主であれば行使可能な権利を単独株主権と呼びます。

つまり、少数株主は会社のオーナーではなく単独では経営権を握ることは出来ませんが、一定以上の株式を有し経営に参与する権利を持つ株主を指しています。したがって、大株主に名を連ねるような、いわゆる機関投資家は大株主ではありますが少数株主であり、逆に本当に持株が少ない一般株主は、少数株主の権利を有する株主ではない場合もあるわけです。

株主の権利は、「自益権(会社から経済的な利益を受けることを目的とした権利)」か「共益権(株主が会社の経営に参与することを目的とした権利)」であるか、「少数株主権」か「単独株主権」であるか、などによって分類されますが、内外を問わず、機関投資家は少数株主としての権利の確保には敏感です。これは企業に対して一定割合を保有する社会的責任のある株主であるという点と、企業価値向上についてコミットしているプロフェッショナルとしての責任感から、その責任を果たせる状態を確保するためです。

日本の株主権は米国などに比べて、法律上は比較的守られています。例えば、マジョリティ・ボーティング(取締役選任の過半数制)やプロキシー・アクセス(株主提案取締役候補の会社委任状書面への記載)といった米国において対立が先鋭化した株主権限拡大運動の焦点は日本ではすでに実現済みであるともいえます。したがって、日本では株主の権利自体を拡大させようとする動きよりは、むしろ株主権の濫用を避けるために、株主総会における議題提案権などについては提案に必要な株式数などのバーを引上げるべきなのではないかという意見もあるくらいです。

一方、実質面から見て日本で少数株主の権利が守られているかという事に対しては、異なった見方があります。これはコーポレートガバナンス・コードでも議論となった政策保有株式が安定株主の存在により少数株主の権利が実質的には希薄化しているといった問題や、議決権の希薄化を伴う様な資本政策により、実質的に少数株主の権利が確保できていないのではないかという懸念です。

したがって、日本企業が少数株主の権利を考える場合には、「その権利が実質面で弱められる様な行動ではないか」という視点で機関投資家がどのように捉えるのかを考慮する必要といえるのです。




 

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