運用会社の利益相反管理


①スチュワードシップ・コードでは機関投資家に対して利益相反の管理方針の策定・公表を求めており、フォローアップ会議の意見書でもさらなる強化が求められている。
②海外の先進事例などに基づき管理や開示の向上も求められるが、「利益相反は不可避に生じうる」という前提で自ら普段の改善を続けていく姿勢が必要。

日本版スチュワードシップ・コードでは、原則2において「機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。」として、機関投資家は顧客・受益者の利益を第一として行動すべきであること、特に議決権行使における利益相反の管理と想定し得る利益相反の主な類型化及びその管理方針の策定、公表を求めています。

しかしながら、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(3)においても、「金融グループ系列の運用機関について、親会社等の利益と運用機関の顧客の利益との間に存在する利益相反を回避したり、その影響を排除するための措置が必ずしも十分に機能していないケースが多く、よりきめ細かな対応が必要ではないか、との指摘がある。また、同一の機関内におい
て運用以外の業務を行っている場合における、当該業務を行う部門と運用部門との関係についても、同様のことが指摘されている。このため、運用機関自身のガバナンスの強化や、運用機関とその系列親会社等との関係等から生じうる利益相反のより適切な管理に向け、以下のような取組みを進めるべきである。」とされています。

意見書では具体的には以下の3点が書かれています。
①最終受益者の利益の確保や利益相反防止のため、独立した取締役会や、議決権行使の意思決定や監督のための第三者委員会などのガバナンス体制を整備
②議決権行使や対話に重要な影響を及ぼす利益相反が生じうる局面を具体的に特定し、それぞれの利益相反を回避したり、その影響を実効的に排除するなど、最終受益者の利益を確保するための措置について具体的方針を定め、公表すべき
③運用機関の経営陣は、スチュワードシップ責任を実効的に果たすための適切な能力・経験を備えているべきであり、系列の金融グループ内部の論理などに基づいて構成されるべきではない。また、経営陣は、自らが運用機関のガバナンスや利益相反管理において重要な役割・責務を担っていることを認識し、これらに関する課題に対する取組みを推進すべきである。

この内、②に関してはスチュワードシップ・コードの原則2そのものとも言えますが、具体的に例を挙げて説明されています。

議決権行使や対話に重要な影響を及ぼす利益相反が生じうる局面として、例えば以下のような場合が考えられる。
- 投資先企業に対し、当該運用機関のグループ企業、または当該運用機関内の他部門が金融商品・サービスを提供している/しようとする場合
- 当該運用機関の投資先企業が運営する年金の運用を受託している/しようとする場合 等

海外等においては、議決権行使等に際して利益相反が生じる場合に講じている措置として、以下のような例が見られる。
- 運用機関内部の独立した機関により審議し、審議の記録を保持
- 外部の第三者機関に自らの議決権ガイドラインを示すなどの工夫を行いながら、その第三者機関の判断を活用 等

これらを見るとアセットオーナーや金融庁から見て、運用会社の利益相反に関する対応が十分ではないと考えられていることが分かります。

さて、英国においてスチュワードシップ活動における利益相反の管理では、主として自社及び親会社などと関係の深い企業(グループ企業、運用受託先の母体企業、その他営業上関係を有する企業など)に対する投資及び議決権行使となっています。その上で求められる体制は下記のようなものになります。

利益相反規定の整備
利害関係者の特定(対応方針の差が明記される)
従業員教育(組織として認識が共有されているか)
常時監視体制(定期的な規定の見直しと検査体制)
Webサイトでの方針の公開

これらについては、海外での先進事例に比べるとまだ不十分な点もみられるものの、運用会社も相当程度対応は進めてきています。
運用機関からすると、なぜさらなる取り組みを求められるのか、どこまでやればよいのかという疑問があると思います。体制整備が十分でないのか、開示が不十分で十分な理解が得られていないのか、などの疑問もあるでしょう。
もちろん、将来的には証跡・外部監査なども求められるなど、要求水準は段階を追って強化されてくると考えられます。

しかしながら、私が英国などの事例を見て感じる大きな違いは、彼らの利益相反管理が、「全ては運用会社にとって利益相反は不可避に発生する」との認識から始まっているのに対して、日本の運用会社は「利益相反は悪であり、それはあってはならず、当然我々は行っていない」という姿勢で説明していることです。

あることを説明するのは比較的簡単ですが、ないことを説明するのは常に困難です。特に利益相反の場合、金融グループの一員である運用会社が疑われる要素はいくらでもあるため、非常に難しい問題といえるわけです。

スチュワードシップ・コードの受入れ表明文を見ると利害関係者を自社または親会社だけに限定するまたは、議決権行使だけに限定しているものも多く見られます。ただ、これでは出来ていると言える部分がそこに限定されていると捉えられてしまうのではないでしょうか。

私は、利益相反に関する問題は、企業のコーポレートガバナンスに関する問題と同様に、その取り組み姿勢にあると思います。これらの問題は、どこまでやれば十分かではなく、常に改善が必要な問題として認識し、不断に改善の努力をしていくという基本姿勢が先ずは重要なのではないでしょうか。




 

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