スチュワードシップ受入方針文の見直し


①運用会社は定期的にスチュワードシップ活動の受入方針文の見直しを行うべき。
②受入方針文はアセットオーナーが理解しやすいように見直し時期と見直し内容を明記することが必要。
③担当部門、エンゲージメントにあたっての基本的な課題意識なども受入方針文の中で明記することが必要。

スチュワードシップ・コードの受入れを行った機関投資家は、具体的な活動方針などを述べた受入方針文を発表し、金融庁のHPの中でそれぞれの方針へのリンクが貼られています。スチュワードシップ・コードでは受入れから6ヶ月以内に方針を開示することが求められているため、方針はすぐに確認可能ですが、受入れからすでに2年以上が経過しているにも関わらず、方針文の見直しを行っていない会社も多く見られます。受入方針文はスチュワードシップ活動の大方針であるため、頻繁に見直すことの方がおかしいという意見もあるでしょう。しかし、現在の方針文が単に発表しただけでその後内容の見直しや確認を行っていないものなのか、定期的に確認を行った上で方針に変更がないことを確認したものなのかの区別がつかないため、英国の定期的に見直しを行う事が必要であると考えられています。これは、方針の全面的な見直しを求めているわけではなく、見直しを行った結果変更なしという事も含めてその証跡を残しておくことが必要だということです。スチュワードシップの受入方針文をアセットオーナーや顧客が見た場合、その方針を発表または見直しが行われた日付が明記されていないと、スチュワードシップ・コードの受入れを行い、方針文を形式的に発表したものの全く見直しをしていない会社と、真剣な議論に基づき変更または変更の必要がないことを判断した会社とで区別がつかないからです。
実際、多くの会社が行っているスチュワードシップ活動の内容は受入れ当初に比べて進化しており、方針文自体の見直しも進めています。しかしその足跡を文書の中で残していないと、それが良く伝わらないわけです。足跡の残し方については、優良な企業のディスクローズ資料を見習えば、何がベストプラクティスかはすぐに理解できます。例えば、エーザイは取締役会規定をディスクローズしていますが、それをいつどの条文について見直してきたかという事について開示しています。いつ何を見直したかをディスクローズし、その理由を問われた場合に明確に答えられるということは透明性の高いディスクローズの基本なのではないでしょうか。

スチュワードシップの受入方針文に関するディスクローズで改善が求まれる点としては、スチュワードシップ活動に関する責任者または責任のある部門の開示があります。基本的に対話という限りは双方向のものであり、投資家側からの一方的な質問あるいは要望ではなく、企業側からの疑問や要望に対して対応する場面があると考えるのが自然です。その場合、スチュワードシップ活動に責任を持つ部門または責任者を明記し、企業がそこにアプローチできるようにしておくことが重要です。また、その部門はどのような時にどの様な課題でエンゲージメントを行うのかという基本的な課題意識を明記しておくことも求められているのです。

英国では方針の見直しと時期、担当部署、企業に対してエンゲージメントを行う際の基本的な課題について明記し、透明性の高いスチュワードシップ活動が求められており、日本でも運用会社の対話相手である企業の立場で考えると、対話相手の運用会社が自らの立場を示すことは相互を理解しあう上で重要と考えられます。

日本では、スチュワードシップ・コード創設の一年後にコーポレートガバナンス・コードが創設され、環境が大きく変化しています。この様な状況変化に対応して内容を見直すことは当然であり、その見直しが行われていないとするとそれは問題です。運用会社は先進的な事業会社と同様の姿勢で開示を行い、範を示すことが求められているのではないでしょうか。



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