株式投資が美人投票であることの意味


ケインズは、株式市場の投資家のあり方を、美人投票に参加する人達になぞらえていました。当時よく行われていた、新聞紙上の美人投票は、100人の候補者の中から最も票を集める6人を予想するという様なものです。そして、その6人を選べた読者には賞品が与えられるという様なものでした。この際、読者は自分の好みで候補を選んでは商品をもらえません。読者に与えられた課題は「平均的な意見が平均的だと考える意見」を予測する事になります。

このことから、投資は人が考える先を読んでいくゲームだという人もいます。これはまるで人よりも賢ければ、このゲームに勝てるというようにも聞こえます。しかし、世の中で賢い人とお金持ちになる人が異なるように、理論的に正しい事と市場において正しい事には大きな差異があります。

これはよくある設問です。多くの参加者を集めて1〜100までの数字を1つ同時に選んでもらいます。その際に、みんなが選んだ数字の平均の80%に一番近いと思う数字を選んでもらい、それが当たった参加者には賞金が出ます。では皆さんはどんな数字を選ぶでしょう。

① 1〜100までの数字ですから、参加者がランダムに選ぶとすれば平均は50になると考え、その80%にあたる40を選ぶ
② もう少し先読みする人は多くの人が40を選ぶはずだと考えて40の80%にあたる32を選ぶでしょう。
③ 更に先読みする人は、32の80%である25.6を選びます。

この様な事を繰り返していくと、最後には最適な答えに辿り着きます。それは全員が0を選ぶ時です。では、人よりもずば抜けて賢い人が最初から0という答えを選んだらどうでしょうか?それはほぼ間違いになるでしょう。なぜならば、他人の行動についてどこまで推論できるかという事は人によって異なるからです。

 このゲームは単純ですが、株式市場では論理的にはどの数字になるべきかという事を考えると同時に、短期的には他人の考え方や心理状態を読むということになる訳です。

 この事実は、心理戦を戦うことを避ける長期投資が有効である事にも繋がりますし、短期の市場において市場は必ずしもランダムウォークではなく、参加者ごとに異なる推論の度合いによっても市場が左右されることになり、様々な投資機会が生まれることになるのです。




 

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